POS(Point Of Sales)とは、日本語に訳すと「販売時点情報管理」と言います。この言葉が示す通りPOSレジを使うとある商品やサービスが販売された時間、商品(サービス)名、数量、場所といった情報を記録することができます。これがPOSのないレジスターとの大きな違いです。では、販売情報を記録、管理できることでどんなメリットがあり、反対にどんなデメリットが出てしまうのかを紹介していきます。
飲食店や小売店を中心に利用されているPOSレジ。POSシステムを使うことによって、様々な販売データを取得できるため日増しにその重要性が高まっています。平成28年10月6日には内閣府がPOSデータを景気動向の分析などに活用する方針も発表しています「新たなデータの活用について①〜景気動向の把握におけるビッグデータの活用〜」。
POSを含むビッグデータを活用することでスーパーや商店の販売動向などが即時にわかるため景気動向、物価動向を素早く正確に把握する目的に利用するという方針が打ち出され、2016年度内にも試験的に運用されるようです。
これほど、注目されているPOSデータを小規模店舗でも有効に利用することで売上向上につなげていくことが可能になります。
1.現状の問題に対して販売戦略を立てやすくなる
POSデータを扱えることによる最大のメリットは「どの商品が」「どこで」「いつ」「どのくらい」売れているのか?また売れていないのかを即時に把握できることです。このことにより「商品構成を見直したい」「商品開発を行いたい」「いつキャンペーンを行えばいいのか」などの店舗が抱える課題に答えることができるようになることです。
その日の販売情報だけでなく、長期間にわたる販売情報を時系列でも分析できるため、どの時期にどういったキャンペーンを打つことが効果的なのか、年間を通した販売施策も立てやすくなります。そのため、無駄な広告や販促プロモーションなどを削減しやすくなり、効果の高いものだけに集中することができるようになります。
2.業務時間や人件費の削減効果
POSレジを使うと会計を行った時点で売上データが即時にデータベース上に記録されるため、レジ閉めを行う必要がなくなります。また、インターネット経由で販売情報が残るため、離れた店舗の情報を別の場所から閲覧、管理することができます。このことにより、閉店後の一日の売上集計作業や複数の店舗を運営している場合、FAXなどで売上報告を行う必要がなくなります。さらに、バーコードによる商品管理を行うことで商品の在庫情報をリアルタイムで管理できるようになるため、棚卸し作業が圧倒的に楽になります。
POS機能のないレジスター専用機とPOSレジの機能の違いをまとめると次の表のようになります。
POSレジ | レジスター | |
---|---|---|
インターネット接続 | ○ | × |
販売情報管理 | ○ | × |
売上集計・分析 | ○ | × |
複数店舗管理 | ○ | × |
ポイント管理 | ○ | × |
顧客管理 | ○ | × |
在庫管理 | ○ | × |
会計 | ○ | ○ |
価格 | △ | ○ |
大きな違いはPOSレジであれば、インターネット接続が可能になるため、サーバー(クラウド)上で販売情報を蓄積できることです。販売した商品や日時、金額、数量といった販売した時点でのデータを貯めておけることで分析が可能になります。さらにポイントデータや顧客情報と紐づけることで誰が、どの期間に何を買ったか、またキャンペーンを実施した場合には、どのくらいの効果があったか?まで測定できるようになります。
これまで商品を販売したデータの利用はAmazon、楽天のようなECサイトやGoogle、Yahoo!といったインターネット広告会社の専売特許のように思われがちでしたが、近年では業種、規模問わず様々な方法で利用されています。
ローソンにおける商品構成見直しの事例
“コンビニエンスストアのローソンで、ヒット商品でもないのに棚に並び続けるスイーツがある。2012年2月に発売した「エッグタルトパイ」だ。この商品、単に売り上げだけで見れば売り場から外されてしまう「失敗作」。だが同社で販売履歴などを分析する担当者は「売り場には今や欠かせない」と強調する。
なぜか。注目したのは売り上げの絶対額ではなく、1人の顧客が同じ商品を何度も買う「リピート率」だ。エッグタルトパイはこのリピート率が、ローソンのスイーツで最大のヒット商品「プレミアムロールケーキ」より高い。
しかも来店頻度が高い得意客ほど、エッグタルトパイを何度も購入する傾向が強いことも分かった。仮に販売をやめてしまった場合、これを楽しみにしていた得意客が競合する他のチェーンに流れてしまう可能性がある。
出典:日経の紙面から「店作り変えるビッグデータ、購買履歴や映像分析、勘では見逃す商機発掘(検証)」“
このように感覚だけではわからなかったことが数字を分析することで、売れるための相関関係がわかるようになります。どのような層の顧客が何を買っているのかを詳しく見ていくことで新たな商品の開発や外す商品、残す商品の選定にも役立ちます。
また、長期販売量データを見ることにより、いつどの商品がどのくらい必要になるかを事前に予測しておき在庫過剰や在庫不足を防止することが可能になります。
以上見てきたようにPOSレジデータによる得られるメリットは大きいのですが、反面、デメリットも存在します。
1.のコストについては、POSシステム付きレジの場合、買い切りだと1台あたり数十万円〜百万円以上になることが多く、タブレット型POSシステムの場合、月額課金で一ヶ月あたり数千円でも使い続ければレジスター専用機よりも高額になります。POS機能はいらない、と割り切れば会計機能のみのレジスターでも良いのですが、販売データを使って売上を拡大したい、と考えられるのであれば利用料金は高くなってもPOS付きレジを選ぶほうが賢明だといえます。
2.POSシステムを狙ったウィルスやPoSマルウェア(不正プログラム)は世界的に見れば増加傾向にあり、日本での検出数はまだ少ないようです。ただ世界規模から比べれば僅かではありますが、国内でのPoSマルウェアも増加していますので、セキュリティには注意する必要があります。
3.せっかく多くのデータを集めてもどう利用していいかわからない、というケースは多いと思います。データの分析にはPII、NPII、RFM、ACBなどの分析方法があります。タイトルだけ見ると複雑そうですが、統計分析をこれまで学んだことのない方でもやり方さえ覚えればFreePOSの売上集計・分析機能を使って簡単に行うことができるようになります。具体的な分析方法についてはあらためて紹介していきます。