平成28年10月から全国で順次、最低賃金が改定されます。東京では907円から930円と大幅に引き上げ。全国どの地域でも20円以上、過去最大の引き上げ幅ともいわれています。
最低賃金の引き上げはもとより、全国的にアルバイト・パート募集時の平均時給は年々上昇を続けており、8月時点で三大都市圏エリア (東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)では1,028円。東海エリアでは929円。関西エリアでは956円となり、首都圏、東海、関西すべてのエリアで前年同月比プラスとなっています(リクルートジョブズ2016年8月度の「アルバイト・パート募集時平均時給調査」より)。
この時給上昇の背景には働き手の不足があります。有効求人件数と有効求人倍率は08年のリーマンショック時に一時落ち込んだものの、それ以降は右肩あがりに上昇し、直近の16年7月時点では有効求人倍率(パート)の平均が1.62倍。つまり、求人をかけても人が足りない状態になっています。
求人件数および求人倍率の推移 (パートタイム)
オレンジ色の棒グラフが「有効求人件数(パート)」、青色の折れ線グラフが「有効求人倍率(パート)」
厚生労働省発表一般職業紹介状況 16年7月分より
職業別で有効求人倍率を見ると、特に飲食関連の「接客・給仕」が5.01倍、「飲食物調理」が3.22倍と非常に高く、「商品販売」についても平均より高くなっています。平均1.62倍よりも倍率が低くなる職種は工事、会計、技術者といった専門職が大半を占めるため、一般的なパート・アルバイトについては、人手不足になっているわけです。
そのため、時給を高く設定しなければ働き手が集まらないという状況になっているのです。
時給を高く設定することで1名あたりの人件費が上がります。コストを必要に以上に増やさないためには、いままで2人雇っていたところを1人に減らしたり、労働時間を減らさなければなりません。
労働時間を減らしながらも、これまで通りに営業を続けるためには業務効率、生産性を上げることで対応するしかありません。そのために、システムや設備を導入することが必要になってきます。
最低賃金の引き上げに伴うシステム・設備導入を支援するために業務改善助成金がこのたび、拡充されることなりました。
業務改善助成金とは中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金の引上げを図るための制度です。
生産性を向上させるためにPOSレジシステムや機械設備の導入といった設備投資を行い、事業場内最低賃金を引上げた場合に、設備投資にかかった費用の一部を助成するというものになります。
元々、最低賃金が1,000円未満の事業場内で引上げ額が60円以上の場合に助成率1/2、助成の上限額30万円のみでしたが、事業場内最低賃金が750円未満で30円以上の引上げ額から事業場内最低賃金が800円以上1,000円未満で120円以上の引上げ額まで段階に応じてコースを選べるようになり、コースに応じて助成率、助成金の上限金額が変わる「引上げ額選択コース」が拡充されました。
■支給対象者
全国の事業場内最低賃金が1,000円未満の中小企業・小規模事業者が対象。
■支給要件
1.賃金引上計画を定め、申請後に賃金引上げを行い、支払うこと。
※引上げ後の賃金が最低賃金額を超えるものでなければなりません。
2.生産性向上のための設備・器具の導入を行うこと。
※単なる経費削減のための経費、職場環境を改善するための経費、パソコン、営業車輌など、社会通念上当然に必要となる経費は対象外。
3.解雇、賃金引き下げ等の不交付事由がないこと。 など ※
■生産性向上のための設備・機器導入例
・POSレジシステム導入により、早く正確な商品管理が可能に
・予約管理、顧客管理システム導入により正確性が高まり、顧客対応・サービスの質が向上
・バーコード管理システムを導入、発注ミスが減り業務時間が短縮
・インターネットから顧客・在庫・帳票まで一元管理できるシステムを導入し業務を効率化 など
導入前の課題:
POS機能のない通常のレジスターを使用しており、日々売れた商品や売上を把握することが困難であった。また、月初に全商品をまとめて棚卸しており、商品管理も追い付かないことが悩みだった。
導入後:
小売店業者に特化したパッケージソフトの「ReTELA(リテラ)」とタッチパネル式POSレジを導入。アルバイトでもすぐに操作を覚えることができ、会計がスムーズに。また、リアルタイムでの在庫状況把握も可能になり、業務効率が向上。
・生産性が向上し、最低賃金を引上げ。
・棚卸しにかける時間が削減された分、商品開発、販路拡大に集中できるように。
・導入システム
多店舗管理・在庫状況のリアルタイム確認・顧客管理・売上管理・バーコード発行、管理が可能な小売業向けクラウド型POSシステム「ReTELA」
導入前の課題:
スタッフが少ないため調理と予約などの電話対応を兼務。売上の管理についても帳面で行っていたため、ミスがあったり、本来の業務に集中できないことが多く、コストが増加しても、人員を増やす必要に迫られていた。
導入後:
飲食業向けパッケージソフト「BeSHOKU」とCTI(電話を受けると自動的に顧客情報、予約状況をパソコン画面に表示)するシステムを導入。これまで時間のかかっていた予約状況の確認、登録や顧客情報の登録がスムーズにできるようになり、新しくスタッフを雇う必要がなくなった。また、本来の調理・接客業務に集中できるようになった。
・新しく人員を増やすことがなくなり、最低賃金を引上げ。
・顧客満足度が上がり、リピート率が改善。さらなるサービスの質向上を目指す。
・導入システム
飲食店に必要な顧客管理・予約管理・売上管理が一つに。さらに電話と連動した顧客情報、来店履歴の表示も可能なPOSレジ連携システム「BeSHOKU(ビショク)」
注1…交付申請書の提出前に設備投資等や事業場内最低賃金の引上げを実施した場合、対象となりません。
注2…事業場内最低賃金は、交付申請書の提出後であれば、いつ実施しても構いません。
注3…設備投資等は、交付決定通知後に行う必要があります。
各申請様式等は厚生労働省「業務改善助成金」からダウンロードすることができます。